カナダの小学校では、世界中から集まった子どもたちが机を並べ、日々さまざまな言語や文化の中で学んでいます。中でも英語が第二言語の子どもたち(ELL: English Language Learners)にとって、英語力を自然に身につけるために欠かせないのが「多読(Extensive Reading)」です。文字を追う楽しさを知り、読む力を育てる――そんな学びの土台を支えているのが、現地で広く活用されている多読プログラムです。
この記事では、カナダの小学校で実際に取り入れられている英語多読の進め方や、子どもたちに人気の教材「Oxford Reading Tree(ORT)」や「Owl Diaries」を紹介します。また、それぞれの教材がどの程度の英検級に相当するのか、読みやすさレベル(YL)とあわせて解説します。多読のスタートに迷っている方や、子どもの教材選びに悩んでいる方のヒントになれば幸いです^^
目次
本記事の内容
- カナダの小学校における英語が第二言語の子どもたちへの教育ノウハウ
- Oxford Reading Tree(ORT)の概要と活用法
- Owl Diariesの特徴と多読への活用
- ORT・Owl Diariesと英検レベルの目安
- 実際の体験談:子どもの多読による成長と本の選び方
カナダの小学校での英語教育ノウハウ
カナダの小学校では、英語が第二言語の子どもたちに対して、一人一人の英語力に合わせた段階的な教育が行われています。学校によっては各教室にレベルごとに分類されたボックスがあり、その子の理解度や興味に合わせて、先生がおすすめする場合もあれば、子ども自身が本を選んで読むこともできます。年齢ではなく、その子の英語力にぴったり合った本を読むことで、効果的な学習を進めることができます。

カナダの小学校の教室には、テーマやレベルごとに分けられたリーディング用の本がカゴに入っています。(筆者撮影)
Oxford Reading Tree(ORT)は英語を第二言語とする子どもたちにとって効果的な学習ツール
Oxford Reading Tree(ORT)は、イギリスのオックスフォード大学出版局が開発した子どもたちの英語読解力を育むための総合的な読書プログラムです。このプログラムは、英語を母語としない子どもたちを含む様々な学習者に対応しており、カナダの小学校でも導入されています。
ORTの最大の特徴は、全20レベルの段階的な構成です。最初は文字のない絵本から始まり、子どもたちは物語の流れを理解する力を養います。その後、1ページに1文の簡単な文章が加わり、語彙と文法の基礎を築いていきます。この段階的な進行により、子どもたちは無理なく読解力を伸ばし、自信を持って読書に取り組めます。
ORTの物語には、Biff、Chip、Kipperという親しみやすいキャラクターが登場し、子どもたちの興味を引きつけます。これらのキャラクターの日常的な冒険や出来事を通じて、読者は自然に英語の表現や語彙を学べます。
出典:Oxford Owl for Home+4Oxford University Press Southern Africa+4Amazon+4
また、ORTはフィクションに加え、InFactシリーズのノンフィクションやGlow-wormsの詩など、多様なジャンルの書籍を提供しており、子どもたちの興味や関心に合わせた読書体験ができます。
ORTは家庭学習や学校教育で柔軟に活用できるよう設計されており、保護者や教育者向けのガイドやリソースも充実しています。これにより、子どもたちは自分のペースで読書を進められ、読解力とともに学習への自信や意欲も育てることができます。
アルファベットも読めない状態でカナダの小学校に通い始めた娘は、最初は1ページに2〜3単語書かれた本を毎日音読する、という課題が出されました。アルファベットを覚えるためにはアルファベット文字の塗り絵をしたりしていました。
ORTのレベル別に英検との大まかな目安
対象年齢は、ORT公式の学年対応、YL(読みやすさレベル)、カナダ現地校での使用実例をもとに、英語が第二言語の子どもを想定して設定しています。実際の学習状況により前後することがあります。
ORTステージ | 対象年齢(目安) | 英検級の目安 | YL(読みやすさレベル) | 特徴 | 商品ラインナップ
(ORTでまず読むことをおすすめされているTrunkStoriesのみ掲載) |
Stage 1〜2 | 4〜5歳 | 英検5級未満 | 0.0〜0.6 | 絵本中心、文字なしまたは1ページ1文程度。 | ![]() Oxford Reading Tree Level1+ First Sentences Pack(Amazon)楽天ブックス ![]() Oxford Reading Tree Level2 Stories Pack(Amazon) |
Stage 3〜4 | 5〜6歳 | 英検5級 | 0.6〜1.0 | 短い文章と基本的な語彙。Kipperたちの冒険が始まる。 | ![]() ORT Stage 3 Stories CD、ガイドブック付き ![]() |
Stage 5〜6 | 6〜7歳 | 英検4級 | 1.0〜1.4 | 文章量が増え、語彙も拡大。複数文の展開もある。 | ![]() Oxford Reading Tree Level5 Stories Pack(Amazon)楽天ブックス ![]() Oxford Reading Tree Level6 Stories Pack(Amazon) |
Stage 7〜9 | 7〜8歳 | 英検3級 | 1.4〜1.8 | より複雑な構文と語彙。因果関係なども登場。 | ![]() Oxford Reading Tree Trunk Pack B(Amazon) |
Stage 10〜13 | 8〜9歳 | 英検準2級 | 1.8〜2.4 | 物語の構成が高度になり、読み応えがある。 | ー |
Stage 14〜20 | 9〜11歳 | 英検2級以上 | 2.4〜4.0 | 章仕立ての長文。抽象的内容やファンタジー性も。 | ー |
参照元リンク:
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Oxford Reading Tree – Oxford University Press(ORT公式解説)
英語圏での学年(Year 1〜)とレベルの対応が記載されています。 -
ORT Book Band & Age Guide
Book Band(色分け)と年齢、ORTステージとの対応表が参考になります。 -
YL(読みやすさレベル)データベース(日本語)
英語多読で有名な「SSS多読研究会」によるYL指標とORT書籍の対応。
Stage1+〜5のメインストーリーがセットになったTrunk Pack Aもあります。
Oxford Reading Tree Trunk Pack A
Owl Diariesは現地の子どもたちに人気のシリーズ
『Owl Diaries(オウル・ダイアリーズ)』は、アメリカの出版社Scholasticが展開する「Branches」シリーズの一部で、初めて自分で本を読む子どもたち向けのチャプターブック(章立てのある読み物)です。主人公は、カラフルで元気なフクロウの女の子、エヴァ・ウィングデール(Eva Wingdale)で、彼女の日常や冒険が日記形式で描かれています。カナダの小学校でもよく読まれており、文章量や語彙レベルが適度なため、英語多読の中級レベルに適しています。
Owl Diarieyのあらすじと展開
シリーズの第1巻『Eva's Treetop Festival』では、エヴァが学校の春祭りを企画することになります。しかし、準備が思うように進まず、友達や時には苦手なクラスメートにも助けを求めることの大切さを学びます。このように、各巻でエヴァはさまざまな課題に直面し、それを乗り越える過程が描かれています。物語を通じて、読解力だけでなく、感情の理解や社会性も育むことができます。
Eva's Treetop Festival: A Branches Book (Owl Diaries #1) (English Edition)
Owl Diariesの特徴
- 対象年齢: 6〜8歳(小学校1〜2年生程度)
- 読みやすさ: 短い文章と大きな文字、カラフルなイラストが各ページに配置されており、読書初心者でも楽しめます。
- 内容: 友情、協力、自己表現など、子どもたちが共感しやすいテーマが中心です。
- 形式: エヴァが自分の日記に書き込む形で物語が進行し、読者は彼女の視点から物語を追体験できます。
英検レベル:英検3級〜準2級程度
Owl Diaries Series Set, Books 1-16 (A1)
わが家の実例:子どもが取り組んだ多読の手順
1)フォニックスを学ぶ
2)1ページ1文の本を読むことからスタート
3)少し長い文の本を読み聞かせの時間に読む
4)日本語で読んだことのある本を英語で読んでみる
5)徐々に長い文章やページ数の多い本に挑戦する
本の選び方は、文字数・お話の長さ・本人の好みを基準に選びました。子どもたちを見ていて感じたのは、やさしい単語の本をたくさん読むことが自信となり、「もっと読みたい」という意欲につながるということです。
子どもの英語学習に役立った本
多読を始める前に必要なフォニックスの学習はこれ!
カナダの小学校でもグレード1のときに授業でフォニックスの勉強をしていました。
Sounds Great 1 : Workbook
1〜4完まであります。
その他、英語多読の初期に導入した本
クリフォードのお話も読み聞かせをたくさんしました。1年くらいたってから、自分で読むようになりました。
Clifford the Big Red Friend Story (Clifford the Big Red Dog)
英検レベル:英検5級
まとめ:多読は英語力だけでなく“自信”も育てる
多読を通じて、英語力だけでなく、自信や自己肯定感も育まれますし、子どもたちが自分のペースで読書を進め、楽しみながら少しずつ長い文の本、難しい本に挑戦していく過程で、「できた!」という達成感を味わうことができます。また、ORTやOwl Diariesは、段階的に学べる構成と魅力的なストーリー展開により、多読に最適な教材として活用できます。読み聞かせてみたり、自分で読めるお子さんは読んでみて感触が良ければ、同一シリーズで読書量を増やしていくとぐんと読書体験が増えると思います。カナダにきて3年、いろんな英語の本を試して見ましたが、一番大事なのは、多読は決して急いで進める必要はないということ。一人一人の興味や理解度に合わせて、楽しみながら継続することが、長期的な英語力の向上につながると思います!対象年齢やレベル感にとらわれず、気長にコツコツ取り組んでみると良いと思います。